Concept-8 製作過程 その5
LastUpdateSunday, 31-Mar-2019 02:27:20 JST 
(C) 2019 Makoto Tsuruta / CRANE Home Page


- My original concept model -
Made by Makoto Tsuruda in 2019.


2019年3月23日公開:最新更新日Sunday, 31-Mar-2019 02:27:20 JST


 

CRANE コンセプトモデル 2019
  前回(その4)に引き続き第五弾です。

 

【その5】


前回はようやくトリプル X ブレーシングが完成したのでしたな。戦隊モノの必殺技のようなネーミングです。
同時進行でネックを作っていますので今回はネックの作業を中心に掲載します。

ヘッドの左右側面に糸巻き用の穴を開けます。ストリングポスト(巻軸)用の穴ですな。最初に直径4.5mm そのあと 9mm で空けます。今回はスロットの幅ピッタリの治具を作り、挟んで穿孔しているのでキッチリ綺麗に仕上がりました。
ヘッドプレート / 化粧板 はハカランダの単板。サンディングしたのち糸ノコ盤でざっくり切り抜きます。文章で書くとたった一行ですが、現在超繁忙期のためこの2枚の写真の作業に1週間かかっています(#ぜんぜん進んでないね〜)。

 

 

ヘッド全面にヘッドプレートを接着(ここはタイトボンド)。
あとはスロット2つを小刀やヤスリ類で整形して ... 途中のこまごまとした作業の写真は割愛... ピッタリに仕上がりました。

 

 

これまた同時進行でブリッジとペグ(糸巻)のノブを塗装します。
このマシンヘッドはなかなか良く出来ていて、少し硬めですがガタも無くスムーズな操作感。ノブ(つまみ部分)は塗装することで本黒檀本来の艶と深みが表れます。
ブリッジはハカランダで黒檀の化粧板を接着したのち裏面をスクレーパでさらってから塗装。今回は下地も含めてオイルニスで仕上げています。

 

 

う〜〜〜ん、連日帰りが遅いもんだから、このところ疲れが抜けませんな ..... 

 
九州の田舎で育った私は夕方になるとランドセルを背負って小学校から片道約4kmをテクテク歩いて帰るのです。
夏の夕暮れ時は夕陽が山々に映えて情緒があります。
マッタリ歩いているとスクールゾーンに沿った家々から何やら甘い香りがプ〜〜〜ンと .... (ホンワカではなくちょっとキョーレツだからプ〜〜ンなのだ)。
そう! 焼酎の臭いです。しかも芋焼酎。
今おもえば、夕暮れ時はそこいらじゅうの家々から焼酎の臭いがしたものです。そういう時代だったのでしょう。

地元でいうところの「ダレヤメ」ですな。現代でいうところの呑み会。ダレ(疲れ)を止める(やめる)から生まれた言葉でしょうか。
疲労がポン!と、とれる「ヒロポン」の語源ではないかと思われるような造語で個人的には面白い語彙だと思っているのです。

重いランドセルを引きずっていると友達のR子ちゃんの家では暑いので引戸も窓も開放し、談笑しつつ賑わっておりまして、
またバカなコトしゃべってるなぁ、なんて思ったら、ん? こりゃ〜、と〜ちゃんの声だ。
と〜ちゃんが大好きな鶴田少年はツカツカとR子ちゃん宅へ入りますと、周囲の大人達が「おまえは呑まんのか」というのですが
「小生は勤務中/帰宅途中ですゆえ何卒御容赦を」と切り抜けてスルメを口いっぱいに入れて帰路につくと ... 。
裸電球の街路灯に黄金虫が集って飛んでいたのをおぼろげに覚えています。

そんな時代なので子供の頃はよく焼酎を買いに行ったものです(#お遣いともいうね)。
鶴亀というブランドで一升瓶に鶴と亀のイラストが描かれたラベル。製造はたしか執印醸造でしたか(地元では日本酒は売っていない)。
そりゃもう、大変な人気でした。その地域では「鶴亀」しか売っていなかったと言っても過言ではありません。
その後しばらくしてその鶴亀焼酎は姿を消しまして ... 廃業されたのでしょう(#と〜ちゃんもさぞショックであったろう)。
今になって検索してみると同じ名前で無くなったと思っていた執印醸造の鶴亀焼酎が2010年頃に復刻版?なのか長期保管品だかが販売されてはいたようですが、昔のラベルではありません。このあたりの事情はよくわかりませぬ ....。

 

え〜〜〜と、ネックの話でしたな。仮眠をとって疲れも少しとれたので作業再開。
ボディの厚みを変更したので当然ながらヒールの高さも変更します。ただ、逆にヒールを短く切り詰めてしまう方法もあります。
ギターにおけるヒールの下半分はほとんど役にたっていないので、今回のモデルでも一時はヒールレスにしようかと思ったのです。
しかし、あれこれ考えたのち、ここでは素直に延長します。CRANEのコンセプトシリーズは作りながら考える。だから進まないのです(^_^).....
黒檀のヒールキャプを貼ってざっくりヒール全体を整形しておきます。

 

 

今回の楽器ではヒール内側に工房クレーン独自の方法を加えます。あとでネックを外しやすいように溝切り加工。
一般的にはアコギもクラギもネックを外すにはジョイント位置のフレットを抜いてノズルを刺してスチームを入れる方法、もしくは指板を剥がしてしまう方法などがあるのですが、いずれも手間がかかって厄介です。修理の経験をここに取り入れてみました。このギターでは黒檀のヒールを剥がすと穴が最初から開いており、お湯を注入してニカワがゆるみやすくなっています。指板もまたジョイント位置から先は4mmほど上げて(一種のレイズドFB)ネックを外す場合は持ち上げた部分をノコでカットするだけですむように作ります。まぁ、文章ではわかりにくいので今後の写真を御覧あれ。
写真の「ハ」型に配置した黒檀板は指板を上げる高さ調整のシームです。

  

 

指板の高音域のみにフレットを打ちます。バーフレットにしようか迷いつつ、一般の製作家でも修理がしやすいように今回はT型フレットでいきます。指板はインディアンローズウッドで綺麗な縞のある個体です。
金床は鉄道のレールですな。スキマ無くキッチリ打っていけば最後に均す必要がないほど均等な高さになります。鉄道員の息子はレールが大好き。

 

さて、指板をネックに接着します。ループ状の指板専用SSTを使います。ナット位置にストッパーの木片を仮接着。そして指板保護用の厚板材(高音域に3つの溝を切った)で押さえます。接着時の加圧で指板がズレるのを防ぐために指板とネックをピン打ちする製作家もいますが、そうすると修理で指板を剥がすときに厄介なので、ここでは小さな木片を指板に接着してズレ防止ガイドとしています。これが非常に効果的で、ズレはまったくありません。
本番前にリハーサルを2回ぐらいやってバンドのループの大きさを決めたり突起箇所を確認しておきます。ニカワがはみ出した場合に備えてネック両側をマスキング(結果的にはほとんど溢れず)。

 

 

接着はここでもニカワ(野ウサギの膠)を使います。冬なのでニカワを塗るとあっという間に冷めて乾いて硬化するので素早く作業します。指板の表側全面を少し水で濡らして膨張させておき、いつもり高めの温度でニカワを煮てちゃちゃっ!とネック側に塗り(タイトボンドのときは両面に塗ってなじませて時間を掛けて接着剤を追い出す余裕があるのだけれど)、すぐに指板を合わせて、バンドで締め上げていきます。ニカワ塗布から約二分でクランプまで完了。

 

 

このまま乾かすことにして、今夜はもう寝ます。明日も朝が早い ...

 

つづきは「その6」にて掲載します。

 

2019年3月23日公開

by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.
 
  

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