私的素敵頁:裏カメラ工房

続編  でっかく撮ろうブローニー 122 to 120「 Kodak 3A」

記事:2020年10月30日

- (C) 2020 Makoto Tsuruda / CRANE Home Page / Shiteki Suteki Pei (Pay)-

 

 

Kodak No.3A MODEL C

正式には Eastman Kodak No. 3A FOLDING POCKET KODAK MODEL C 
略すならば 3A - C ですな。
じつはコレ、私が入手した最初の 3A ですた(#1号機ともいふね)。全体ボロボロで3000円のジャンク。部品取りのつもりだったのでわりと気楽にゲットしました。
最初の3Aとの出会い。届いてまずはその巨体に驚き、同時に6x14cmで撮れることに気付いて はっ!としたのす。
シャッターとレンズは非常に良いコンディション。蛇腹は補修用の材料として欲しかったので穴や破れはありましたが、まずまずの状態。
3Aのモデルのなかでは最終の時代なので、デザインがモダンになりコスト削減や合理化が進んでいます。基本的には丈夫で高性能なカメラです。



この最初の 3A-C は裏ブタの状態が悪くて、試写の結果は光漏れがハデに出ました。結局はレンズ、シャッター、張り革やらネジ類に至るまで幅広い部品を他の蛇腹カメラに移植しました。ホントに部品取りになったワケで。そのおかげでいくつもの蛇腹カメラが蘇ったのです(#ありがとう!)。
そしてまた、このジャンク3Aのおかげで、状態の良いちゃんとした3Aを探そうと決心したのでありました(それが前回掲載の3A-B3 2号機)。


※ 小西六のパールIIIがちっちゃく見える

 

【メモ】古い蛇腹カメラには光漏れが付きもの。運動会にはフォークダンスが付きもの。
一般的な蛇腹は クロス+紙+薄革 の三層構造になっています。経年で摩耗してピンホールが出たり切れたり剥がれが生じます。
ところが安易に接着剤や厚い革で補修すると蛇腹を畳んだときに蛇腹同士がくっいたり、厚みのためにフタが閉じなくなります。接着剤も経年で劣化するのでいずれはまた穴が開きます。パーマセルテープを貼る人もいますが、あくまでそれは臨時の対処。
いちばん良いのが新品に交換することですが、決して安くありません。カメラが3台ぐらい買えてしまう ... 。
蛇腹の補修には中古カメラの蛇腹が良いとされており、とにかく蛇腹の革は薄いんです。計ったところ0.2mmぐらいです。
市販の補修材としてはヤンピーの革(山羊の皮)が使われる事があります。薄くて丈夫。手芸分野で扱っています。
それなら、とヤンピーの革をネットで検索して探したんですよ。そしたら ....

私が探しているのはヤンピーの革だってば! ヤンキーの革を入手してどうするの?
何度検索してもGoogleはしつこく ヤンキーの革をお探しですね? と言ってくるのだ。

 

 

Kodak No.3A MODEL A 箱形 

略すなら 3A-A ですな。私が入手した3Aの3台目。初期の3Aにはこういった箱形もありまして、モノリスみたいで個人的にはスクエアなデザインが好みです。入手した個体は清掃した時点では蛇腹も健全でレンズも綺麗。6x14cm判の3号機として期待していたのです ...
 レンズ収納状態のサイズ:11.8 x 25 x 6.6cm
 撮影状態のサイズ:11.8 x 25 x 17.7cm

  
※トップのファインダーは後付け

 
ところが、初回の試写の結果、レンズが粗悪なものに交換されていることが発覚。マトモに撮れませんでした。まるでダメ。
そこでいったん1号機の 3A MODEL C からシャッターとレンズを移植しました。これはなかなか良く写りました(以下の2つの作例)。さらにそののち、別途入手した乾板カメラのダゴールのレンズ+シャッター+ピントスケール を移植しました。
おかげでレンズ交換と調整のコツを修得したのです。

 

 

● 3A-A 試写(抜粋2例)

Kodak folding Pocket No. 3A MODEL A 箱形 120改造 6x14cm 
ILFORD HP5 PLUS 120判 ISO400
レンズは 3A-C から移植したボシュロム社のラピッド・レクチリニア(RR / Bausch & Lomb Rapid Rectilinear)。なんとなく広角気味に写ります。レンズには焦点距離も絞り値も刻印は無く、ボシュロムのメーカー名のみ。現像液はヘタリ気味の Xtol 1+1 ですが、D-76より持ちが悪いように感じています(#環境には優しいのですが)。
作例の農夫とサッカー少女は1/25秒で、しかも夕暮れ時だったので三脚を使っています。同じ日の撮影なので茅葺き屋根もそうです。
前回の3A-B3の作例を思い出しても三脚はやはりあったほうがいいなぁ。でも、個人的には目立つのがイヤなのよ .... フツーにサクサク撮りたい。

1枚目 農夫とサッカー少女 F22 1/25秒   無限遠距離設定で撮影
2枚目 茅葺き屋根 F32 1/50秒       5m距離設定で撮影

 

 

 

前回と同様にファインダーも付属のミラー式では物足りず、折り畳み式を追加。機動性が向上します。スクエアなボディにはスクエアなファインダーがよかろうと、同時代のがゲルツ社のプレスカメラ アンゴーから移植してみました。あとで元に戻せるように工夫して装着します。そして対物レンズのガラスには細い油性サインペンで上下マスクの範囲にラインを引いておきました。横長の画角を意識しながら、その周辺もファインダーでチェックしながら撮ることができます。前回のパーマセルテープよりもこのほうがいいかもしれません。線を消して元に戻すにはベンジンで拭き取るだけですし。

  

 

とりわけ蛇腹カメラのなかでもこういった木製暗箱タイプは光漏れしやすいです。
まぁ、まずたいていは光線漏れします。いや、必ず漏れます!漏れてみせます!(#をひ!をひ!)
蛇腹だけでなく本体が木材なので、経年の収縮や反りなどがわずかながら発生しており、裏ブタなどは布蝶番1枚でつながっているだけです。対処は必須と思ったほうがいいでしょう。
それで、入手してすぐにフタの収まるボディ側の全周囲に2mm幅の起毛クロスを貼って遮光。さらにボール紙で遮光プレートを作ってフタをします。これは圧着板を兼ねています。我ながら良いアイディアです。私は天才かもしれない。
フィルムが平坦に圧着されるように2mm厚ぐらいのモルトを貼りましたが、試写ののちこのモルトの両脇にさらに補強を2列追加しました。サイズや厚みや弾力選びは試行錯誤です。
結果は上々。それでも光漏れするのであれば、外箱全体にパーマセルテープ/シュアーテープでしょう。

  

 

シャッターは T・B・I の3モードです。当時のコダック社のチラシでは幼稚園児たちが撮影しているイラストがあり、このシャッターを備えるカメラはお子様でも撮れることを謳っていたようです。
シャッター速度は単速で I(インスタント)となっており、たいていは 1/50秒 もしくは 1/25秒
あいにく、使っているうちにシャッターが故障しました。修理している期間に他のレンズとシャッターに移植したりと、あれこれ差し替えて実験しました。

  

 

 

 

レンズの交換・置換えについて 

以前にも書きましたが、オリジナル保存という意味ではむやみに交換せず、オリジナルのままでありたいものです。
しかし、カメラに限らず入手した時点ですでにパーツが交換されていた、なんてことはよくあります。3Aも想像以上に部品交換個体が多いことがわかってきました。
そこで、差し替えレンズを入手!

乾板カメラ GOERZ TENAX 80x106mm判 (#ゲルツが好きねぇ ... )。レンズはダゴール DAGOR 125mm F6.8 COMPUR
入手の時点では汚れてボロボロなドナー。ブリッジは錆びつき、レールも固着。張り革も剥がれて浮きまくり ... フツーの人はこの汚れたレンズを見て手は出さないでしょう。
 


カタチアルモノハミナコワレル(by ピタゴラス) ....
木製暗箱の蛇腹カメラは100年過ぎた個体が多く、修理に出すと部分修理では済まないので全体的なオーバーホールになり高額 ... 。
しかし、往々にして見た目の汚れたホコリだらけのレンズは、じつは状態が良かったりもします。綺麗に見えるレンズは手が入っている証拠。(#どっちを選べばいいのよ?)
悩ましいですなぁ ...

 

 

 
このタイプの蛇腹カメラ、レンズ移植や交換のポイントは以下のようなところかと ... 。

・イメージサークルのサイズ
写る画像1コマの対角線よりも大きなイメージサークルが必要です。大判カメラではアオリ撮影をするのが前提なので、イメージサークルはさらにひとまわり大きいのが一般的。3Aの 8.5x14cm判では焦点距離は約170mmが標準レンズ。しかし、レンズに刻印されている焦点距離が同じものを移植しても 6x9cm判用レンズだと四隅が欠けて暗くなることがあります。少なくとも調達するレンズが3Aと同じか、より大きなフィルムフォーマットであるべきでしょう。

・焦点距離
写る1コマの対角線が標準レンズという基本を考えれば選択しやすいです。昔の蛇腹カメラでレンズ固定式のポータブルとなれば基本的に標準レンズしか付いていなかったのですから。仮に焦点距離がわからない場合は、実際にカメラに取り付けてシャッターを T または B にして開いておき、露光面にトレーシングペーパーを貼って距離を確認します。自分でピント合わせのスケールを作ります。無限遠でピントが合う位置がそのレンズの焦点距離であることが一般的で、あとは至近距離の1mとか、2m、5m、20m(ほぼ無限遠と同じ)ぐらいの4点か5点もあれば充分です。
こういった調整でもレーザー距離計が大活躍します。

 

 
・付属部品

レンズボードに固定する後ろのリングはあったほうがいい(レンズ前面にかぶせるUVとかのネジ式のフィルターでも流用できることがあります)。
可能であればピント合わせのスケールもセットで置き換えたほうが楽です。

  

・可能なら元に戻せるようにしておく
3Aに限らず蛇腹カメラの多くが分解&組立てが容易な作りになっています。いつでもまた元の状態に戻せるようにしておければ、なおヨシとしましょう。

 

● 3A-A 試写(抜粋1例)

Kodak folding Pocket No. 3A MODEL A 箱形 120改造 6x14cm 
ILFORD HP5 PLUS 120判 ISO400 現像液 Xtol 1+1
レンズは GOERZ TENAX 80x106mm判の乾板カメラ についていたダゴール DAGOR 12.5cm F6.8 COMPUR
たいして絞っていないのに隅々までシャープです。あいかわらずスキャナの性能がいまいち(#フツーのフラットベッドスキャナにLEDトレース台をかぶせただけ)。

ガスメーター: F12.5 1/100秒  ( 8feet/2.5m レーザー測距) 6x14cm

 

 

【メモ】実際に撮ってみないとわからないもので、乾板蛇腹カメラ8x11cm判用のレンズを3Aに移植しても、四隅は切れずフツーに撮影できたのです(#上記のガスメーターを撮ったダゴール) 。移植作業中にトレペで見えるのは中心部のみなので、やはりフィルムを入れて撮らないと確認できません。
画角はライカ判でいえば35mm相当の広角気味に写りますが、3A は標準レンズだらけであることを考えると、むしろ3Aの大きなフィルムで広角の絵を求める場合には好都合です。シャッターがコンパーで1/250秒まで切れるところも個人的に大歓迎(#こういう3Aがあってもいいと思ふ)。

 

 

 

 

スプールアダプタ新時代 118フィルムを120で撮る

ドイツのゲルツ社は各社にレンズを供給していただけでなく自社ブランドのカメラも販売していました。コダックと同様にドイツ本国だけでなく、オーストリアやアメリカにも「現地ゲルツ社」を設立するなど盛んに展開しており、そのなかから120フィルムを使用可能な 118フィルム規格のカメラの一例を取り上げます。

 
 

GOERZ ROLLFILM TENAX DOGMAR 12.5cm f4.5 

コダック3Aと同じ時代の1920年頃にドイツのゲルツ社が作った蛇腹式フォールディングカメラTENAX(テナックス)です。テナックスは24x24mm判「まねき猫カメラ」でもよく知られているブランドですな。
118フィルムはコダック規格で1900年 〜 1961年に製造された 83 x 108 mm のロールフィルムでした。過去形。
ちなみに、このコーナーで掲載しているすべてのカメラやレンズの写真は、あくまで「清掃・整備・調整・試写を済ませたもの」です。入手時のブツはどれも汚くて到底お見せできませぬ ... 念のため。

 


122フィルムと同様、と〜〜〜〜〜っくの昔に118フィルムも廃盤になっているのですが、これも現行の120フィルムにアダプタを挿して撮影することができます。1961年に廃止になった118フィルム。昭和のカメラ愛好家たちも同じことを考えたようで、バロックギターやリュートのペグと同様に旋盤を挽いて木製のスプールアダプターを自作したり、金属加工の町工場に依頼して120で使えるアダプタを作った人達がけっこういたのですよ(高額だったハズ)。
今や3Dプリンターで作ったものが1組1000円ぐらいで売られています(海外ですが)。アリガタイ世の中になったものです。
この画面サイズをこのレンズでどうしても撮りたいというコダワリ。今も昔もその情熱は変わらないのかもしれません。

 
はい、試写例です。このように上下のマスクとスプールアダプタの改造により6x11cm判7枚撮れます。
途中で何枚撮ったのか忘れて、このように最後の一枚を送ってしまうと122フィルムとの比率でいえば5日間気落ちします。

 

レンズはゲルツ社のドグマー DOGMAR です。ポートレートレンズの代名詞と呼ばれることもありますが、風景もブツ撮りも良く写ります。絞りや環境光によって背景ボケがチリチリになることもありますが、そこはダゴールも他のレンズも同様で、条件を変えて撮れば柔らかいボケになります。

 

● ゲルツ社 ロールフィルムテナックス 120フィルム改造 試写(抜粋3例)

GOERZ ROLLFILM TENAX DOGMAR 12.5cm f4.5 118判(83x108cm)⇒120判(6x11cm)改造
ILFORD HP5 PLUS 120判 ISO400 現像液:D-76 1+1
レンズはゲルツ社のドグマー 125mm F4.5

1枚目 新宿上空飛行中 F18 1/100秒 無限遠で撮影:タクシードライバーも通行人もマスクしてます
2枚目 シュロと切り株 F9 1/100秒  5mで撮影:切株の表皮が繊細です
3枚目 茶室の門塀  F4.5 1/100秒  1mで撮影:レーザー併用なので近接開放でもいい感じです

  

 

【ゲルツ ロールフィルムテナックスの120フィルム巻き上げレシピ】

たぶんこんなものを書いても世界中で喜ぶのは5人ぐらいかと思いますが書いておきます。ゲルツのこのモデルに限らず、他社製でもおおむね共通。
120ブローニー判フィルムで6x11cm判を撮るための時計方式巻き上げレシピです。

(0)まず、シャッターが T や B の位置でないことを確認します。
(1)120フィルムをセットしてリーダー(裏紙)の先端を巻取スプールに留める(または軽くテープで留める)。
(2)少し巻くとすぐにSTART←→が現れるので左端(開始ローラー位置)で停止して裏蓋を閉じる。
  そして8回転ちょうどで1枚目がセットされる。以下、 h は時計の1時間分の角度のことです。

1枚目を撮影したら 2回転+4h 巻くと2枚目がセットされる
2枚目を撮影したら 2回転+3h 巻くと 3枚目がセットされる
3枚目を撮影したら 2回転+1h 巻くと 4枚目がセットされる
4枚目を撮影したら 2回転+0h 巻くと 5枚目がセットされる
5枚目を撮影したら 1回転+10h 巻くと 6枚目がセットされる
6枚目を撮影したら 1回転+7h 巻くと 7枚目がセットされる
7枚目を撮影したら最後まで巻き上げる。

 

【メモ】時計方式の良いところはフィルムフォーマット(写る画像のサイズ)をいくらでも変更できる点です。ボディ内部のフィルム露光面にマスクさえ作って付けてやれば 6x11cm以外にも 6x9cm、6x7cm、6x6cm、6x4.5cm、他にも6x5cmとか6x2cmでも可能です。アナログならではの最強の柔軟性と言えるでしょう。
私はホースマン等のノブ巻上式ホルダーでも同様にこの時計方式を使っており、かなり重宝します。もちろん、ライカ判カメラを自作するときなどにも使えます。
欠点は ... 圧倒的にめんどく ... あ、いや! 記録をつけたり数多くの手順を踏んで深く楽しめることでしょう。

 

 

 

今日のPAY

コダックの 3A は前回も書いたように膨大な個体が現存します。ある程度自分で修理するのであれば安価に楽しめます。しかし、現実には1台では満足な結果が得られないことが多いので、数台のジャンクを集結して1台完成させるということになってしまいます。1発でマトモな1台を探すのは困難。今後はその傾向がさらに進むであろうと考えます。
骨董の世界ではこれらを「授業料」といいますな ...

さて、今日の私的素敵Pay(してきすてきぺい)は以下のとおり3000円から5000円程度。そのままで使えるものは1台も無く、整備・試写・調整が必要でした。前回の 3A-B3が、いかに幸運な買物であったかおわかりいただけるでしょう(#めったにありません)。
この他にも部品など入手して頑張りすぎたので出費も重み、反省して少し売却しました。いくつかのスキルも身に付いて勉強になりました。

   
 
Kodak No.3A MODEL C ジャンク 送料別    ¥3000 ⇒ 整備と試写ののち部品取り。レンズのみ6000円で売れました
Kodak No.3A MODEL A 箱形 送料別      ¥5300
GOERZ 乾板 80x106mm TENAX DAGOR 送料別   ¥5500
GOERZ ROLLFILM TENAX DOGMAR 12.5cm f4.5 送料別  ¥3300
 ⇒ 整備と試写ののちに15000円で売れました

   

 


 (C) CRANE HomePage/ Makoto Tsuruda info@crane.gr.jp 


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