本編へ戻る

今回の旅で使用した機材。改造レンズなどのメモ。



● ソニー SONY α7R （ ILCE-7R ）

2013年に発売された35mm判フルサイズのセンサーを備えるミラーレスのデジタルカメラ。 発売時の実勢価格は21万9,800円。世の中にはお金持ちが多いとみえて爆発的に売れました。 およそ9年を経てようやく値段がこなれてきたので6万円で入手（個人的にはオモチャとして使うにはまだまだ高いと思ふ）。
フィルム時代の一眼レフカメラやコンパクトカメラなどから目玉（レンズ）を取り出して、改造してボディに装着してお遊びで撮るのが正しい使い方です。乾板写真機時代のレンズ、戦前の歴史的鉄カメラ、世界の名レンズ、昭和のコンパクトカメラ ... いまや素敵な名玉がタダみたいな値段で手に入ります。各社マウントアダプタや改造用パーツも豊富です。
弦楽器工房の裏はレンズ工房。興味本位でセッキョクテキに改造レンズを作ります。
自宅の防湿庫で眠ってる古いカメラに、サボッてると目玉を取り出してα7Rのエサにするぞ！と、脅かせば不具合が治ったりします ^_^;









● 東京光学　TOPCON UNIREX UV TOPCOR

1969年発売の放射線を放つ硝材を用いたアトムレンズ UVトプコール
4群6枚 対称ガウス型 5枚絞り羽根
UVの名前のとおり紫外線を低減するのがウリらしい。
当時は陸軍の東京光学（トプコン）、海軍の日本光学（ニコン）といわれ我が国を代表するカメラメーカーでありました。 本来はUNIREX（ユニレックス）というレンズシャッター式一眼レフで、交換レンズが数種類売られていました。そのなかから 50mm F2 という標準レンズのマウントとヘリコイドをデジカメで使えるように自分で改造。 UNIREXは現存するレンズの多くの後玉にカビがありまして ... 探すのがたいへん。
レンズシャッター機であったためにフランジバックがけっこう長い。それならむしろ ... ヘリコイドの選択肢が広くなります。最終的には 9cmまで接写可能にしました。
発売当時はユニレックス本体と50mm F2レンズで33,500円。
酸化トリウムを含む光学ガラスの放射能レンズで高い解像度。21世紀の今でも堂々と通用する描写。
いや、むしろ今こそUVトプコール！ なにしろ1400円
トプコール おまえの時代だ　（←沢田研二 風）








● 富士フィルム FUJINON 45mm F1.9

4群6枚の対称ガウス型。絞り羽根8枚
1959年に発売された富士フィルム社のコンパクトカメラ FUJICA 35-SE に付いていたレンズ。単体のレンズでは販売されていないので、中古カメラを買ってレンズだけ取り出します。ミラーレスデジカメで使えるようにマウントやヘリコイドを自分で改造。このレンズは絞りの工作がちと厄介で、素早く操作できるように古風なレバー式にしました。今回の旅ではこの絞りレバーが大活躍。
ついでに最短撮影距離34cmまで接写できるようにヘリコイドを選定。食事写真で重宝します。家族旅行用のカメラであったにもかかわらず、当時は世界の写真マニアが崇拝したライカのズミクロンに負けない解像度で世界を驚かせました。
ライカレンズとは値段がケタ違い。今でもケタ違い。いや、2ケタ違います。 現在、フジカ35-SEは中古市場では捨て値同然。説明なしのジャンク品を2000円で入手。しかし、届いてみると現物のレンズは奇跡的に綺麗な状態。カビもクモリも無い。
アタリだ！ やはり写真の神様が手を差し伸べたのだ。
「ケチな鶴田よ。コレで撮れるもんなら撮ってみろ。」
しかし、素直にレンズが外れず悪戦苦闘の末、結局すべて分解 ^_^;
神様は試練をお与えになったのですな。
おまけに絞り羽根には油乗りがあったのでバラして洗浄して再組み立て。ふぅ ...
※SEのあとはコストダウンが進み 8枚絞りが5枚絞り→4枚→2枚ビハインドシャッターへ ... 時代に流されてチープになっていきます



 





● コシナ フォクトレンダー スーパーワイドヘリアー 15mm F4.5

Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical
2006年ごろの発売。ライカL39マウント 非球面レンズ。
6群8枚 絞り羽根10枚 110度　最短撮影距離 30cm
これは改造不要で変換マウントを調達するだけで準備完了。
周囲にマゼンタかぶりが出ます。SONYの撮像素子は構造的にこうなりやすいのだそうな（もっと新しいα7モデルにはマゼンタ補正プログラムがついています）。 １週間ほど撮影してクセやら補正方法やらを確認。ほんのわずかでも傾けて撮るとグイッ！と画面が歪みます。なにしろ15mmだもの。 フィルム時代はF8ぐらいにしておけばピントなんかラフで良かった超広角レンズですが、フルサイズのデジカメではごまかせず。F11であっても多少のフォーカシングが要求されます。
そのかわり、近接でないと撮れない状況で威力を発揮。キョーレツに圧縮したダイナミックな絵が撮れます。小型軽量でフットワークは抜群。ちなみに APS-Cのデジカメで使うなら周囲のマゼンタカブリはほぼ消えます（ライカ判の22.5mm相当）。
本体105g　Eマウントへのアダプタ込みでも165g ちっちゃい！


これは↓ NEX C-3（APS-Cサイズの撮像素子）で撮影






● AGFA KARAT IV SOLAGON 50mm F2

ゾラゴン/SOLAGON 50mm F2
2群6枚　対称ガウス型
1954年に登場したアグファ社（GAFAぢゃないよ）のフィルムカメラ カラート４型です。
AGFA KARAT 36 というモデルの後継機。当時はコダック社のレチナ/Retinaのライバルでした。 どちらも135（35mmライカ判）のコンパクトな蛇腹式カメラ。 1950年代以降は時計もそうであるようにカメラの戦国時代。 とくに35mm判のコンパクトカメラは世界中のメーカーが鎬を削ったのであります。
世界中のレンズメーカーもまたこれに追従。 シュナイダー社のクセノン50mm F2やローデンシュトック社のヘリゴン50mm F2 のようにコダック社のレチナに対して供給しつつ、ライバルのアグファ社へも同じレンズ クセノン50mm F2やヘリゴン50mm F2 を提供していました。 戦いに乗じて売れるときに売っちゃえ！みたいな。どっちもがんばれ！ みたいな。
しかし、コダック社が エクターEktar 47mm F2 をレチナの特別なレンズとしたように、アグファ社はゾラゴン/SOLAGON 50mm F2 をフラッグシップレンズとしていたのです。

譲れない戦いがある。
↑いまどきのサッカーの試合みたいな


だいたいゾラゴンって名前が悪そうで強そう。
ゾラゴン/SOLAGONは1940年代に始まった2群6枚の対称ガウス型。 のちの1976年に発表されたゾリター/SOLITARと並ぶAGFA社の歴史的な名レンズ。 現在、アグファ社のカメラを探すと中古市場でよく見かけるのは3枚玉ApotarやAgnar、4枚玉テッサー型のSolinarというレンズ。クセノンやヘリゴンもたまに見かけますが、ゾラゴン/SOLAGON 50mm F2 が付いている個体は希少。ちなみにアメリカではAGFAのカメラはアンスコ/ANSCOというブランドで販売された時代がありました。
時代とモデルによって多少の差はあるものの KARAT は比較的整備しやすい構造です。機構としての工作精度はレチナのほうが上だと感じますが、メンテナンス性や市場の相場はカラートが多少優位かと思います。
なぜか2台持ってます ^_^;

※ カラーネガフィルム：Kodak GOLD 200
1950年代のカメラとあって逆光はちょっと苦手







え？　良いレンズが欲しいなら最初からライカでも買えばいいじゃないかって？ いやいや。その気になればお金で解決できるけど、私はそんなコンビニエントなシアワセは要らんのよ。調査して探して、修理・整備して回りくどい作業をやって、手間暇かけて苦労して得られるから満足度が高まってシアワセを感じるのよ（脳科学でいう自分で獲得する喜び）。
私は余計な労力を支払って感動を求めているのじゃ。
そもそも21世紀の鉄カメラはめんどくさいを楽しむのなのじゃ。



写真の神様　「そうじゃ！ そうじゃ！」






　

記事：2022年8月21日　コロナは続くよ♪ どこまでも♪



本編へ戻る

■ 私的素敵頁に 戻る