カポタスト製作ちょ〜入門:カポのフォルム





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スペイン式カポタストのフォルム/スタイル

さて、カポタストといっても原理や構造などじつに種類が豊富なのですが、CRANEではとくにスペイン式カポタスト(略してスペカポ)がお気に入り! 金属のクリップ式やゴム式よりもはるかに味わい深い。また、そのスペカポにも様々なものがあります。魅力的なスペカポとは?傾向を分類してみようと思い、構造やしくみについて以下に書き綴ってみました。以下、がんばってイラストレータでカポのイラストも描いてます。急いで描いているので、ちょっとパースのおかしなものもあるかもしれませんが、フォルムの違いは御理解いただけるでしょう。


各部の名称

まずはスペカポの各部の名称を定義しておきます。私が勝手に呼び名を付けたもので、本来は何と呼んでいるかわかりませんが、よく使う部位の名称を便宜上の日本語に割りあてておきます。も〜、勝手に定義しちゃうもんね、IEEEとかJISみたいにふるまう身勝手なCRANEです。国際カポタスト標準化諮問委員会から苦情が来そうです(←そんなもん無いって)。まぁ、ここで決めておけば今後の説明にあたって、いくらか便利になるであろうというねらいです。


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上図の仕様が標準というわけではなく、たとえば帯革だけとってもソール&帯革の一体型のようにいくつかの構成の違いもみられます。昔から皆さん工夫・改良してきたってコトですね。ベルトはネックに巻くときに裏返しになってしまうこともあって、ソールから延長すればそれを防げるということで考案されたのでしょう。ベルトは長すぎると巻き出し溝や巻取溝にかぶさってしまいます。楽器のネックの形状や大きさにも左右されます。
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ペグについて

次にカポの重要なパーツであるペグの形状例です。摩擦を利用することから弦楽器の世界ではフリクションペグと呼ぶこともあります。黒檀のペグのなかにはペグ軸と本体穴のテーパが合わず摩耗して滑りやすいものも見かけます。もしくは製作当初からペグ軸が楕円になっており、強く押し込まないとなかなか固定されないような場合はそれが原因だったりします。
さて、ペグですが、カポ専用設計だけ列記してもざっと以下のようなものが挙げられます。あくまでこれらは基本形であって、多くの変形版も多く存在します。下図はおおむね断面しか描いていないので、実際にはさらに様々な立体期的隆起を生じています。同じ四角グリップであってもサイズや装飾や素材も様々だったりするのです。そしてそれらは本体とバランス良く組み合わされるのが理想です。市販のスペカポは本体とペグのデザインがちぐはぐなものが多く、カポ選びのチェックポイントとなります。

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ボディ形状について

次はボディタイプ各種を挙げておきます。これらは比較的よく見かけるボディ形状ですが、長さ、厚み、隆起ぐあいなど、すこしずつ形状の変わったものもあるわけで、たとえば TYPE A のような単純なカマボコ型もガットの巻き穴溝の違いA2.jpgがあったりします。TYPE D や TYPE G をかけあわせたような形状G2.jpgもありますし、 私がよく作る TYPE B のような形状も 考えようによっては TYPE C や DやEの特徴を兼ね備えていると解釈することもできます。また、素材から切り出し、削り出して仕上げたもののほかにインレイ(象嵌細工)やパーフリングライン、あるいはパネルを貼るpanel.jpgなどの装飾もみられます。

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多くは 上記を基本とする形状であり、それから派生したものが多く見られるというわけですな。ペグ、ソール、紐、ベルト、ボディ、これらおのおのがバリエーションを持ち、じつに多彩です。スペイン式カポタストと一言で言っても様々なものが楽しめるのです。さすがスペイン! 奥深い。本来、カポタストはフレット位置をバレーとして押さえるという単純な目的のための小物です。フォルムがたくさんあってもあまり意味がなさそうに思えますが、実際にはそれぞれに独自の味わいがあるのも事実です。日本伝統の「根付け」のようなものでしょう。よくできたカポはまた、美しく楽しいのです。持つ人に喜びを与えてくれます。


製作のためのパスコントロール

私がスペカポを作るとき、テンプレートとなる図面はAdobe社のイラストレータによるベジェ曲線で描きます。何度でも修正しては印刷し、実物大のイメージを明確にしていきます。試行錯誤の繰り返しと加工時の微妙な刃先の使い方によって、思い描いたデザインに近いシェイプが完成します。

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