カポタスト製作ちょ〜入門:カポのお手入れ





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スペイン式カポタストの使い方とお手入れ

スペカポの使い方ですか? 楽器をテキトーに調弦したら、好きなポジションにスペカポを巻いてペグを締める。オシマイ。
しかし、簡単そうにみえて、じつはスペイン式カポタストは装着にコツがいります。不慣れだと装着が難しいと感じるかもしれません。でも、そのコツをつかめばペグを押し込まず回転摩擦のみで弦を留めることができます。

装着のコツネックに巻いてほどほど巻き上げたあと、カポの傾き(姿勢)を平行にし、指板と弦にカポ本体を押しつけてから最後の締めを行う

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ペグでガットを巻き上げて徐々にギューギューと締めあげていくのではなく、 左手で弦と指板にカポをギュッと押しつけておいて、その状態でペグを巻いて留めるのです。 そうすればガットやペグにかかる力も短時間で最小限。ガットも長持ちしますし、ペグの軸も摩耗しにくいのです。手慣れた人はこれを自然にやっているわけですよ。つまり、コツを知って上手に使う人のカポは摩耗も少ないのです。こういったことはなかなか認知されていないのが現状です。

装着が悪くてビリついたり、パーツがくたびれてシックリこなかったり、そういうの、ありますね。考えてもみれば、カポタストに限らず楽器もアクセサリも完全無欠なものは無いのですからお手入れや調整が必要なことはよくあります。
年中カポを使うフラメンコギターやバンジョーなどでは趣よりも「耐久性」を優先せねばならないことは理解できます。私みたいにたまに取り出して遊んでる程度なら革や羊腸ガットでもいいのですが、職業人プレーヤーは本番でカポのトラブルが発生すると困りますからナイロンの紐(ガット)も「有り」です。

スペインでは伴奏するプロは予備のカポを必ずポケットに入れているのが一般的だそうです。そこで、マドリッド在住のCさんにお願いして現地のフラメンコギタリストのカポ事情について訊いてみました。

guitarristas profecionales buenos, si. y tradicionalmente si.

昔からプロギタリストは常に2個ポケットに入れて仕事したそうですが、最近の若手のギタリストは必ずしもそうでもないと。
それでもギタリストとして質の高い人はいつも2個準備しているとか。なるほどね。
さて、このページでは私が気付いた「お手入れ」と「使い方」についてざっと書いてみました。


カポがゆるむ / うまく留まらない

これはスペカポでは代表的な問題でしょう。というより、カポタストに限らず、むしろ多くの木ペグ/フリクションペグの楽器の調弦では頻繁に話題にのぼります。ヴァイオリンやリュートやガンバ、 あるいは古いギターや古いマンドリンなどは木ペグですよね。結論からいえば、きちんと調整された木ペグは比較的容易に調弦できます。 操作のなめらかさや感触の良い楽器は弾く意欲をわかせてくれます。もちろんスペイン式カポタストも木ペグですし、同じことがいえます。

スペイン式カポタストの様々な不具合の原因をひきおこす代表的な原因は「ペグのテーパ」と「装着姿勢」にあります。以下、御覧あれ。

【木ペグがうまく締まらない3大理由と対策】

ソールの高音弦側か低音弦側が指板から浮いている → ソールは指板と平行に取り付けよ
経年変化でペグやペグ穴が摩耗したり変形してい → 再調整せよ(製作家に依頼)
たんに不慣れ → がんばれ


ペグのテーパはカポの製作精度の問題なので、買ったあとは基本的にユーザはいじれません。あとはやはり「使い方」なのです。カポの形状がゆえにどうしても指板とカポのソールが平行に装着されず、高音弦側または低音弦側が浮いてしまう傾いて装着 弦の浮き.jpgことが非常に多く見られます。浮いた状態ではペグをより強く巻こうとするので摩耗が進み、余計に滑りやすくなります。この使い方を繰り返すとペグはあっというまに摩耗してボディにめり込んでいくのです。正しい装着rightcapo.jpgはビリつき防止だけでなくペグの摩耗も防ぐのです。


木ペグでは糸巻きの軸が経年変化等で楕円になってしまって巻き上げが難しくなってしまうことがあります。木材は木目(年輪)の層の方向に収縮する性質peg.jpgがあるので、古い楽器ではたまに起こる問題です。ペグリーマやペグシェーパで修正すれば解決できます。ペグとペグ穴のテーパの違いをなおすには工具が必要なのでちょっと厄介ですね。ペグリーマ自体が楕円になっていることもあります。製作家に相談しましょう。

フリクションペグでうまく調弦(巻き上げ)できないもうひとつの理由として、ペグへの巻き取りガット(弦)が長すぎる場合が考えられます。市販のスペカポの場合は必要以上に紐が長いことが多く、何回もペグの軸に巻き上げられていくうちに、ガットが本体の肩に乗っかってペグを持ち上げ、浮き上がってしまう例pegup.jpgを見かけます。いくらまわしてもペグが浮くので固定されません。長すぎるガットは適度に切り詰めましょう。

・ガットのコブが大きいのであれば1コブ切って小さめに焼き固めなおす。 
・巻き上げるときに、gutwound.jpgまずコブの上を経過させ、次にコブの下に巻き取る。
 (ちなみにペグを巻き上げる方向は時計回りが一般的ですが、半時計方向でもかまいません)
・摩耗が原因の場合はペグの軸を水拭きクリーニングして乾かす。 もしくはチョークを使って滑りにくくする。  
 (ライブ演奏の最中のように緊急の場合は、ペグの軸をナメナメしてシャツでフキフキすればペグの滑りは緊急的に止められます) 




楽器への取り付けや取り外しでカポをよく落とす

カポの装着の向きfitside.jpgはどちらでもいいのですが、6弦側からネックにかぶせる方向へ取り付けると、緩んだときに落としにくいとされています。私は取り付け方向にはあまりこだわらず、むしろ装着したときに美しく、格好良く見えるカポを目指して作っています。



弾くとビリつく

・指板の高音弦側もしくは低音弦側が浮いている場合、指板とソールを平行に装着しなおす。
・カポがフレットから離れて装着されている場合は増締めするかフレット寄りに付けなおす。
・カポ本体がフレットに対して傾いて取り付けられている場合は、ほぼ平行に姿勢調整する。
・ライブ演奏でゆとりがないときはセロテープをソールに貼るか紙等を挟む。
・知らんぷりしてフツ〜に弾く。



カポを締めたあと調弦がズレる

・あきらめて調弦しなおす(カポを装着したままで)。
 スペイン式カポに限らず、最新式であっても完璧なカポなど無いことを知るべし。


ガットが切れてしまった!

・ひも/ガットは(羊腸であってもナイロンであっても)消耗品です。切れたり、ヘタったら交換gut.jpgしましょう。
・ガットは長すぎる場合、ペグから出ているガットのコブを短く切って焼き固めればいいのですが、思った以上に焼いたときに収縮して短くなります。5mm程度の短い単位で調整しましょう。
・使用頻度が高い場合はおもいきってナイロンに交換するのも一案です。「味」よりも実用度を優先せねばならないこともあるでしょう。


ペグがソールから突き出てきそう。

・スペインで売っているカポはペグとボディのペグ穴のテーパが合っていないものが多いです。そのため必要以上に強くねじこんで使っている人がたいへん多いのが現状。スペイン式のカポタストでペグの寿命を語るのは装着姿勢の問題とテーパの加工が不正確だからです。テーパの合わないカポでペグをしつこく締めようとするとベグ穴は広がり、ペグ軸もやせます。とくに黒檀ペグではその傾向が強いです。

・指板の高音弦側もしくは低音弦側が浮かないように日頃から装着姿勢にきをつける。

・CRANEカポはテーパを正しく合わせて作ってあります。ペグを強くねじこむ必要はありません。無理に押し込むと傷めてしまいます。巻き上げる力があれば充分です。ちなみにCRANEのカポは黒檀のペグよりも黄楊を好んで使います。

・CRANEカポで摩耗が進んだ場合はペグのみの交換も可能です。ガットやソールの交換を伴うこともありますが、お気軽に御相談ください。


ベルト/バンドがボロボロになってきた。

・交換が基本です。お手入れとしては、ふだんはスエード/バックスキンのベルトであれば汚れを砂消しゴムで落とすぐらいです。一方、ツヤのある革の表皮面にはミンクオイルを少量付けて拭くだけで充分です。それもごくたまにでかまいません。乾いてカサカサになると革は急激に痛むので、靴や鞄と同じようにオイルが必要です。それでも傷みが激しいようであれば交換します。


ソールの剥がしかたと交換

・ガットの交換やソールを交換したい場合はソールを剥がす必要があります。
ソールは指でメリメリと剥がせればよいのですが、たまに剥がしにくいこともあります。カッターなどを使う方法もありますが、本体を傷めないように注意が必要です。CRANEのカポはたいてい指で容易に剥がして交換できます。

ここでは別の方法も紹介します。紙ヤスリreprace.jpgの 80番〜120番を用意して平らな台の上に置くか両面テープで貼り付けます。ここにカポのソールを押し当てて前後に動かして削ります。このとき本体を削ってしまわないように、傾かないように注意。薄くなったらノミかカッターかツメなどではがします。ソール(バックスキン面)の厚みの調整も同様に行い、アイロンをかけて固めると良いでしょう。要はソールもまた消耗品であるという点です。


ソールの材料

・ソールに天然ゴムは良好です。私もソールには革と天然ゴム両方を使ってみましたが、天然ゴムは耐久性が高いですね。ゴムといっても歴史は古く種類も様々です。調べたところ、電線の絶縁被覆としてロシアのモーリツ・バン・ジャコビ(Moritz von Jacobi)が1811年にインドゴムを使っているようです。また、1842年ウィリアム・モンゴメリ(William Montgomerie)がグッタペルカを暮らしに取り入れることに気付き、1848年頃にはゴルフボールや海底ケーブルの被覆材が作られています。グッタペルカ(ガタパーチャ/ガタパッチャ)はライカのボディの貼り革として、あるいは杜仲茶に含まれる成分でおなじみですね。ヒストリカルなスペカポという意味で採用するならば堅めの天然ゴムか、もしくは柔らかめのグッタペルカが良いでしょう。入手のしやすさなら、やはり天然ゴムのシート(厚さ1.5mm前後)かな。

・ソールに革を使うならば、薄いものか、もしくは厚くても硬いものを選ぶべし。色艶にこだわるのも革の良さだと思っています。


塗装のハガレや傷

ボディもペグも使い込んで多少の傷や塗装のコスレも出ることがありますが、愛着の証。「味」として楽しみましょう。


CRANEカポの消耗品とアフターサービス

・CRANEカポはすべて譲渡先を記録してあります。お買い上げになった方であればガット(羊腸)弦や革や天然ゴムを実費でお分けしていますのでお気軽に御相談ください。
・CRANEカポの修理や調整で、御自分で対処が難しい場合は遠慮無く御相談ください。ペグの摩耗や交換もやります。これも実費(程度にもよる)で対応致します。




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