- My original concept model -
Made by Makoto Tsuruda in 2019.
2019年4月21日公開:最新更新日 Wednesday, 24-Apr-2019 02:56:30 JST
製作記事:1 2 3 4 5 6 7 8● CRANE コンセプトモデル 2019
【外観とサウンド】
完成後のまとめです。まずは完成しての撮影。 ※ 照明の状態によって各部の色味が変わります。
シルクのようなバブル模様の側面板が綺麗です。調べたたところ側面板は2002年4月24日に入手した材のひとつでした。
表面板の杉とローズの指板は私が製作家として駆け出しの頃に、とある方から頂いたもので40年から50年ぐらい前の材です。
追加の写真です。一見するとのっぺらぼうの表面板ですが、じつは心の清い人にだけ見えるサウンドホールがあるのです。←ウソ
ボディは一般的なモダンよりちょっと小さめ。サウンドにどんより感は無く和音の分離も明瞭、むしろこのサイズならではの切れ味があります。
センターサウンドホールレス、ダブルサイドサウンドホール、トリプルXブレイシング、缶詰エッジビンディング、プチレイズドフィンガーボード、増強サイドシーム、材の組合せも独自、幅広ナット、フレットも太めで垂直カット、何もかもが特別仕様。
オマケに楽器の内部を鑑賞するという楽しみも付属します(#腕時計の裏スケルトン仕様と感覚的には同じですな)。一時は左右の両腰に対称的なサウンドホールも考えましたが、楽器を構えた場合はふさがってしまいます。また、距離を置いて穴のサイズも異なるほうが音の抜けが良いであろうと考えました(とくに中低音域)。2つのサウンドホールの開口面積をいかに設定するべきかについては今後の課題です。今回はメンテナンス性も考慮して私のヒジの関節が入るように設定しています。内部のかなり奥まで手が届きます。両方のサウンドホールから腕を入れれば内部のほぼ全域に手が届くのです(こういったクラシカルギターは歴史的にも珍しい)。低音側のサウンドホールのほうが少し経を大きくしてあります。
弦長の決定にはだいぶ迷いましたが、結果をみると650mmや630mmで作っても面白いでしょう。ふだん664mmや650mmを弾き慣れている人にはだいぶ小型に感じるかもしれません。楽器仲間のTerashimaさんいわくこのタイプでは和音をジャ〜ンと弾いて穴を手でパタパタと開閉すれば、わずかながらもワウワウ効果が得られるとか。
なるほど! 手動式ワウワウ効果も標準装備です。私が試奏しているところを聴いてもらったところ、音量感がだいぶあるとの感想。弾いている本人にもアゴ下のサウンドホールでしっかり音は聞こえていますが、聴衆からみると反射音が回り込んで聴こえるタイプの楽器です。演奏する環境(部屋の大きさや壁材や床材などの違い)によって響きも変わります。一般的な構造のギターよりもそれが顕著に出るように思います。
【仕様】
工房クレーン コンセプトモデル 2019 CRANE Concept-8 2019年4月6日完成 平成31年 / 令和元年
全長:945mm
ボディサイズ:458mm, 240mm, 330mm
弦長:616mm
表面板:米杉(約40年乾燥材 ベアクロウが数カ所に出ています)
裏板:シープレス 3ピース
側面板:メイプル(シルクのようなバブル杢)
ボディ厚:101mm
ビンディング:本黒檀の缶詰エッジ(オリジナル仕上げ)
塗装:下地オイルのラッカー半ツヤ仕上げ
ヘッド:マホガニー(ヘッドプレートはハカランダ)
フレット:極太 T型フレット( 全フレット数18本 90度仕上げ)
指板:インディアンローズウッド(約40年乾燥材 約2mmレイズド)
ロゼッタ:無し
サウンドホール:肩とお尻のダブルサイドホール(メンテナンスゲート兼用)
ブリッジ:ハカランダ
サドル:獣骨
ナット:本黒檀の幅広
弦高(f12):高音側 2.5mm 低音側3.2mm
糸巻き:機械式(ノブは本黒檀)
重量: 1411g(弦含む)・・・ボディのシープレスを厚くしてネック重量とのバランスをとっている
【弦と張力】
プロアルテ ライトテンション EJ43 (J43)ナイロンセット弦
A=440Hz 616mm 総張力:約32.7kg
1弦:0.70mm 実効0.67mm 6.3kg
2弦:0.81 mm 実効0.78mm 4.9kg
3弦:1.01 mm 実効0.97mm 4.7kg
4弦:0.71 mm 実効1.43mm 5.8kg
5弦:0.84 mm 実効1.90mm 5.7kg
6弦:1.07 mm 実効約2.3mm 約5.3kg
ときに楽器と弦の相性が一致したとき、ネックから音がきこえてきます。
【追伸】
ふだん見かけないものを作るので、作業を始めた当初は完成のイメージがなかなか見えてきませんでした。図面が頭の中にあってもなかなか作業が進まないんですね、これが。
ボディのシェイプも今回はオリジナルを考案していますが、弦長との兼ね合いも含めて一般的なモダンギターよりも一回り小さく作りました。木型に細々と木片を刺してはウエストのくびれ具合をほんのちょっとづつ変えてようやく決まった形状です。しかし、写真だけを見ると小さな楽器という印象は無いと思います。要は緻密なバランスなのですね。
以前にも書きましたが、オリジナルデザインの楽器は個人製作家の醍醐味そのもの。
全体に統一感を持つように各パーツもデザインせねばなりません。この楽器ではヘッド先端やブリッジ両端の弧形状と指板先端の仮想サウンドホールに沿ったRなどがボディの丸みを連想させるように構成しています。わかりやすくいえばこのギターのヘッドだけをトーレスやラミレス風にすると激しい違和感が現れることは明白なのです。デザイン言語の考え方ですな。
結果的には 3X(トリプルエックス)ブレイシングも成功して狙いどおりに鳴ります。今回の大きな収穫でした。作業の途中で山ほどのアイディア/ 選択肢が発生し、やがてまとまり最後に1つに集約されるワケで、達成感もひとしお。近年は鶴田自身の故障が多くて、様々な持病やら、ワカイ頃の古傷が再発したり、電池も持たないし、オマケにアレルギーも年々ヒドくなる感じであります。今シーズンは昼の仕事も含めてツライコトも多かったけれど、サウンドもデザインも満足のいく仕上がりとなりました。
おおむね2018年9月ごろから作り始めて2019年4月上旬に完成。工房クレーンの作ったフツーのギター、どぉ?
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2019年4月21日公開
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by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.