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コロナウイルスの肺炎を防ぐには、アルコール消毒が良いのだと毎晩シャトレーゼの樽生ワインをあおり、
eBAYに出掛けては脊椎反射でマウスの人差し指が下がる。
数日後「お届け物です」にびっくりする。 宅配のお兄さんは「シネカメラって死ねって言ってるカメラですか?」とあきれ返る。
せからしかぁ! と開き直る。まったく反省しない。学習しない。
それが「私的素敵頁 / Shiteki Suteki Pay」のコーナー(#備忘録ともいふね)。
些細なコトでも書いておけばこの銀河系で年間5人ぐらい誰かが見つけて役にたつかもしれないシリーズ。
なかでも地味に好評なのが、めんどくさくて楽しい鉄カメラシリーズです。
※ 過去に書いた参考記事:前回のシネカメラSimplex Pocketteや過去記事のMAMIYA16 や MEC16SB片目改造 や次回のシネコダック とか古フィルムでの撮影と現像など、参考になるかもしれません。 参考にならないかもしれません。
■ 映画カメラ(シネカメラ) とフィルム幅
え〜〜、まずは前知識を手短かに。
映画の歴史は1800年代終わり頃からとされ、主に35mm幅(ライカ判)のフィルムが劇場用として使われていました。
これを民衆向けに小型映画として敷居を下げコストを下げるために「フィルムもカメラも小さくしよう」ということになりました。
世界各地で幅の狭いフィルムが考案され(エジソンも22mmなど提唱)、28mmとか17.5mmとかフランスでは9.5mmなど20種類以上が市場に出回りましたとさ。
そのなかで16mm映画フィルムは1923年にコダックの両目(ダブルパーフォレーション/フィルムの左右両側に穴)から始まり、1960年代から片目(シングルパーフォレーション/フィルムの片側だけに穴)が登場し、現在に至るまでじつに長いこと世界中に普及して愛好されてきました。16mmフィルムで撮影した映像は今でも一部の劇場用映画やテレビCM等で使われています。
8mm映画もまた家庭用として、1932年にコダック社が発表しましたがリールに巻かれた16mm幅のフィルムの片側を撮影したあとひっくり返して反対側を撮影し、現像したあとに真ん中から切り分けて8mmとするしくみでした(ダブル8といふ)。1965年に最初から8mm幅のフィルムが入ったカートリッジ式をコダック(スーパー8)とフジフィルム(シングル8)が発表したのち1970年ごろホーム映画の盛り上がりはピークに。現在(2020年2月現在)でも根強く8mmカートリッジフィルムが自家製造までされて売られており、中古カメラを使って撮影されています。
16mmも8mmも小型映画の分野ですが、当時16mmが報道やドキュメンタリー映画に多く使われたのに対して8mmは家庭用としてさらに低コストで楽しむことができました。2020年現在にあっても16mmも8mmも各種シネマカメラのフィルムが販売されており、今からでも楽しむことができます(#しかしダブル8やパテ9.5mmはちょっとたいへんカモ)。
はい、これで予備知識というかざっくりまとめ終わり。
※ 16mm片目フィルム:1969年にスウェーデンの映画監督ルーン・エリクソンが片目のスーパー16という16mmフィルムフォーマット(12.52 mm×7.41 mm)を発明したとされています(米国WikiPedia)。日本語訳はコチラ。
※ 両目の16mm映画フィルムと未使用の8mm映画用ダブル8(両穴)はどちらも16mm幅でフィルムの両側に穴(パーフォレーション)が開いていますが、隣同士の穴の間隔が2倍になっています。従って16mm両目フィルムはダブル8では使えません。
■ 16mm映画カメラ ボレックス(BOLEX H16 M4)
映画用シネカメラBOLEXはウクライナのジャック・ボゴポルスキーさんが1933年に設計して販売した交換レンズ式16mmフィルム用の映画カメラです(製造はスイス)。スチルカメラではアルパ(Alpa)の設計者として知られていますな。
16mmシネカメラといえば業界的にいえばドイツのアリフレックスが標準的ですが、それはあくまで業務用。今から趣味として16mmフィルム動画を始めるなら、候補としてはボレックスが筆頭でしょう。当時、家庭用は8mmが普及していましたが16mm映画機材は高価だったので業務用か一部のブルジョワなアマチュア用でありました。
ボレックスのシネカメラは現在でも製造販売されていますが、1980年代以降のズームレンズの独自マウントSBモデルなど(やたら市場価格が高い)は個人的には別モノと考えており、個人の趣味として16mm映画を撮って楽しむなら1935年から1976年頃までのスクリューマウント(Cマウント)モデルが現実的だと思います。このページではそれを前提で書きます。個人的にはレフレックスではない古い時代のモデルが値段も安くて好みです。なんといってもデザインが違います。
なぜボレックス?かといえば、シャッターがじつに安定していること。動作音も静か。フィルム送り・巻き上げ・シャッター駆動など動力源は電池のいらないゼンマイ式。レンズの選択肢が広いCマウント。などなど .... 但し、それは状態の良い個体での話。
古いH16はとくにマトモに動く個体は少ないです。内部の歯車の不具合や摩擦音があったり、フッテージカウンタ(フィルム消費計)やシャッターボタンの戻らない、巻き上げて噛んだまま動かない、など、様々な問題があります。私ももさんざん授業料を払ったものです ....
ボレックスは国際的に人気もありコレクターもいますが、かなりの確率でハズレがあります(経験的に)。
絶大な人気・膨大なジャンク ... 人気に対してヒドイ物がたくさん流通しているという意味ではボレックスはシネマ界のライカといえばわかってもらえるでしょう。
私も「動作品」を入手して撮影してみたらゼンマイのバネがへたりきっていたり、光漏れとシャッターが同期しない故障でガッカリ、さらによく点検すると他にも不具合有り ...結局その1台は分解して部品取りになりました。
幸いなことに付属品のファインダーやリールやシングルスプロケット、ガングリップなどを再利用することができました。
付属品の価値のほうが本体価値よりも高いこともしばしばあります。
とにかくBOLEXのシネマカメラは入手にあたってリスクが激しく高いと理解するべきです(経験者談)。
【 BOLEX スイス製 H16H M4 1972年頃製造 】
発売年:1972年頃製造
メーカー:Paillard Bolex パイヤール・ボレックス スイス製造
※1965年頃の日本語カタログではパイラードと表記されているが、日本の正規輸入代理店ではペイラードと呼んでいるらしい
モデル名:H16 M4
本体サイズ:23cm x 16cm x 13cm
重量:2.2kg フィルムやリールやレンズを含まず
レンズ:Cマウント交換式(現在の産業用/防犯用カメラと同じスクリューマウントなので安価な新品レンズも入手可能)
撮影速度(fps):12、16、★18、24、32、48、64 [コマ/秒] の7速 ※コマ撮りも可能
撮影時間:24コマ/秒の場合 ⇒ 18.2cm/秒 ※100feet(30.5m)フィルムを使えば 167秒(約2分45秒)撮れる
シャッター速度: 1/30〜1/160 撮影速度 i コマ/秒 に依存
シャッター:金属製回転ディスク式
シャッター角度:144度 ※角度調整は露出を微調整するための機構でモデルによっては可変レバー付
露出:マニュアル(露出計を使って手で絞りを設定)※撮影速度とフィルム感度を固定して絞りで露光調整するのが基本
長時間露光:I -T切換レバーで通常は I にて撮影するがTにしておけば一定時間シャッターを開放できる
使用フィルム:16mm幅の両目及び片目フィルム ※片目仕様なら両目フィルムも使える。穴がないと使えない
フィルムマガジン:基本的には使用しない ※後期のモデルは400feetフィルムを外付けでムリヤリ装着可能
フィルム装填:16mmフィルム用リールを使用。100feet(約30.5m)、50Feet(約15m)
駆動源/巻き上げ:ゼンマイバネ式 電池不要 ※最大20.5回転でフルチャージ
駆動源オプション:専用電気モーター装着可能。クランクハンドルにて手動撮影も可能(ディゾルブとスーパーインポーズが可能)
ファインダー1:フレームサイズ切換式で左側面に脱着 16mm、25mm、35mm、50mm、(60mm)、75mm、100mm、150mm
ファインダー2:H16シリーズのなかにはボディ上面にフォーカサー(ピント調整)ファインダー装着モデル有り
使用フィルム:16mm幅 シングルパーフォレーション(片目)のスプロケット ※ダブルパーフォレーション(両目フィルム)も使える
フィルタ:このモデルでは差し込みフィルタ装着不可 ※レンズ前面にネジ式ガラスのND等なら可能
フィルム露光サイズ:10x14mm (スタンダード16またはレギュラー16と同等)
フィルムカウンター(FOOTAGE COUNTER):加算式(側面フタを開くと0にリセット)
撮影コマ数カウント(フレームカウンタ):ボディ右側面上部に1コマ単位の二重回転ダイヤル表示(逆回転でも正確に1コマづつカウントする)
10インチクリック音カウンタ:フィルムが10インチ(約25cm)撮影されるたびにカチッ!と鳴る。鳴らなくするにはボディ内部のレバーを0に
ボディ:ジュラルミンダイカストにクロムメッキ+モロッコ本革貼り
側面シャッターボタン:前方でコマ撮り、中間で停止、後方で連続撮影、後方に押し込みロックで連続撮影保持
アクセサリシュー:ボディ上面の前方にアクセサリシューを装備(露出計など装着可能)
三脚穴:フラットベース(大ネジx2 小ネジx1) ※古いモデルでは円筒形の片足/一本足で大ネジ1個のみ
■ BOLEX H16 M4 で撮ってみました
■ BOLEX H16を入手しよう! ここがポイント!
【間違って買っちゃう前に! 8mmと16mmの区別】
ボレックスの16mmシネマカメラは製品名が H16 です。同社の8mmカメラは H8 です。
古い時代のモデルの外観はH16とH8は区別できないほど似ています(後期モデルでは銘板にH16とかH8の表記があってわかりやすい)。
シネカメラを購入するときは16mmであることをしつこく確認したほうがいいです(#売主もわかっていなかったりする)。
当時はボレックスに限らず各社ともたいてい8mmシネカメラと16mmシネカメラを製造していました。
しかも同じ機械を使って撮影画像サイズだけ変えたものもあります。まぎらわしいです。
とくに古典的な8mmシネマとして長年君臨してきたダブル8(DoubleRunとかREGULAR 8ともいう)と混同しないように。
★ H8は2本のダンパーが付いています。この写真で確認すべし。
★ リールの穴の形状で判別できます。BOLEX 以外のシネカメラでもこれで判別できます。
16mmシネカメラのフィルムスプール(リール)は直径約9cmの100feet 用が一般的ですが当時は少し小さい直径7.2cmの50feet用もありました。
また、逆に8mmシネマフィルム(ダブルエイト)では直径52mmの25feet用が一般的でした。
しかし、なかには BOLEX H8 のように直径約9cmの100feetリールを使うカメラもあったのです。
ですから単純にリールのサイズだけでは判別が難しいことがあります。
※ ものすごく単純にいえば 16mmは直径9cm、ダブル8は直径5cm と考えれば覚えやすいと思います。
BOLEX H8 は高級品だったので100feetフィルムで長時間・高画質でゼイタクに撮りたい人のためのカメラだったのですな。
● 8mm映画用フィルム(Double-8)のリール
1932年から1970年頃まで
直径52mm 幅18mmが標準 25feet(7.62m)
表面@の穴は3つの爪がありますが、裏面Aの穴は4つの爪があります
● 16mm映画用フィルムのリール
1923年から現在(2020年)まで
直径90mm 幅18mmが標準 100feet(30.5m)
表面は丸穴もしくは四角形の穴、裏面は必ず四角形の穴
【時代ごとの撮影コマ速度の違い】
撮影速度は旧型のH16では8[コマ/秒]で撮影可能です。
前回の記事でシンプレックスポケットは14コマ/秒と16コマ/秒を選べる構造でしたが、
昔は家庭用を意識したシネカメラは14コマ/秒でも充分であり1950年代までは8コマ/秒も歓迎されたのです。
フィルムも現像料も高価でしたからね。1950年代後半からBOLEX H16 では 8コマ/秒 がなくなります。
ちなみに私のSimplexは18コマ/秒から8コマ/秒ぐらいまで無段階に変えて撮影できるようにしてあります。
ボレックスの歴代H16は時代ごとに撮影速度(コマ/秒)の範囲やセットが異なります。
私が調べた限りでは少なくとも5速、6速、7速の3パターンがあります。たとえば ...
H16 Deluxe(1944年) : 8、★16、24、32、64 の5速で標準は16。12コマ/秒と18コマ/秒と48コマ/秒が無い 大ネジの片足ベース
H16 STD(1949年) : 8、★16、24、32、64 の5速で標準は16。12コマ/秒と18コマ/秒と48コマ/秒が無い 大ネジの片足ベース
H16 STD(1955年 ) : 8、★16、24、32、64 の5速で標準は16。12コマ/秒と18コマ/秒と48コマ/秒が無い 大ネジの片足ベース
H16 STD(1959年 ) : 12、★16、18、24、32、64 の6速で標準は16だが8コマ/秒と48コマ/秒が無い 大ネジの片足ベース
H16 M (1961年頃): 12、★16、18、24、32、64 の6速で標準は16だが8コマ/秒と48コマ/秒が無い 大ネジの片足ベース
H16 M4 (1972年): 12、16、★18、24、32、48、64 の7速で標準は18だが8コマ/秒が無い 大小ネジの新時代フラットベース
H16 SB/SBM (1970年代): 12、16、★18、24、32、48、64 の7速で標準は18だが8コマ/秒が無い 大小ネジの新時代フラットベース
【手動クランクハンドルが付属するか?】
私がH16シリーズを気に入った理由のひとつがこれです。ゼンマイが切れたり壊れたりしても手動撮影が可能なのです。素晴らしい!
ボディ右側面の銘板脇にあるセレクターを通常のMから 0 に切換え、シャッターボタンは後方へロックした状態でクランクハンドルを挿して自分の手で回転させれば撮影できます。
※ Mはモートル、つまりゼンマイ動力などで動作することを意味しており、 0 はそのクラッチを切った状態です。
ガバナが効いているので設定した撮影速度を超えることはありません。
しかも逆回転で撮影もできますし、多重露光撮影も可能です(#本来そのための機構)。
中古だとクランクハンドルが付属しないことも多いですし、普通ならゼンマイで動くことが前提なのですが、
私は個人的にこういった機構を歴代モデルで廃止せずに脈々と残してきたボレックスが好きです。
その昔、35mmフィルムで映画を撮影する初期のシネカメラ Butcher & Sons社の Empire などは、
ハンドクランクのみでした(ボディもフィルムカートリッジもマホガニーの木製)。こういったギミックが男の子にはたまらんのです。
電池はおろかゼンマイすら要らない映画カメラ、
ゴミも出ずエコなだけでなく人の手で撮影するというダイレクトな感覚。激しくヤバイ(良い)と思います。
※ クランクハンドルは時代により穴経が異なるので別売り品を手配するときはよく確認すべし
※ この写真は H16 M4 ではありません。もちっと古い時代の一本足時代のSTANDARDです
※ フィルを入れるとき(装填時)や詰まったり咬んだりしたときにも、このハンドクランク機能で解決できることがあります。
【ゼンマイをフルに21.5回巻いて完全にほぐれるまでに撮れる時間とフィルムの長さ】
BOLEX H16のゼンマイは大きなハンドルで21.5回巻けます。
昔の柱時計と同じゼンマイ構造です。いっぱいに巻いて何秒間撮り続けられるのか?
私がH16 M4(1972年)で実測したデータを書いておきます。17feetは約5mです。
フィルムを入れず空打ちできるのは一般的に24コマ/秒まで。
フィルムが入っていない状態で高速で空打ちすると故障の原因となるので御注意あれ(BOLEXに限らず)。
あと、フルにゼンマイを巻いてロックして永久に動かなくなったH16にも遭遇しました(#時計でもよくある)。
19回でやめといたほうがいいカモしれませんね。
12コマ/秒 ⇒ 62秒 17feet 622コマ
16コマ/秒 ⇒ 40秒 17feet 622コマ
18コマ/秒 ⇒ 35秒 17feet 622コマ
24コマ/秒 ⇒ 27秒 17feet 622コマ
追加:1949年のH16 STANDARD の例も挙げておきます。個体差もありますので、あくまで参考程度に。
8コマ/秒 ⇒ 85秒 18feet 722コマ
16コマ/秒 ⇒ 50秒 18feet 722コマ
24コマ/秒 ⇒ 32秒 18feet 722コマ
【フィルム長さと自家現像のカンケイ】
16mmフィルムでの撮影は一般的には100feet(30.5m)のフィルムを使いますが、
H16シリーズのなかには M5 のように本体上部に穴があって400feet(120m)のフィルムマガジン搭載可能なモデルもあります。
業界ではフィルムの装填は暗室よりむしろ日中下で行われました。
最初の30cmぐらいをリールから引き出してスプロケットを通して巻き取りリールに挿したのち、
4フィートまたは5フィートの空送りをしておくのが伝統的作法だそうな(#最初のほうは露光しちゃってるからね)。
ひゃ〜〜〜! 5フィートと いったら1.5m ですよ。
撮る前の段階からいきなり1.5m無駄になっちゃうなんて .... 個人的にはモッタイナイ感しきり。
そこで考案したのが、後述する TSULTRA C LING なのです。これを使えばフィルム装填時に無駄になるのは最初の25cmとか30cm程度のみ。
自家現像するワタクシは2mとか1mで撮影することが多く、長くても5m程度。がんばれば50feet(15m)いけるかな?
ロシア(昭和生まれ的にはソ連)のLOMO社が16mmと8mm兼用の現像タンクを販売しており10mや15mまで自家現像できます。
現在でも新品があるようですが、私は中古で15m現像タンク LOMO UPB 1A を買いました。
1万円ぐらいしますがモデルにより8mm/16mm/35mmの3種類のフィルム幅も現像できます。
1回で15m現像できるので便利な反面、あまりにもデカイ土鍋は邪魔!
長いフィルムは切ってつなげば済むことなのでやっぱり LPL社 5042 (L40222)やパターソンの2m現像タンクで充分?
私は自分で現像することを前提で説明していますが、16mm映画用フィルムはKodakが Vison3 という優れたカラーフィルムも現行モデルとして販売しています。
カラーで撮って本格的な作品を仕上げたいという場合はちゃんとした現像所に出すのが良いでしょう。
モノクロネガ、モノクロポジ、カラーネガ、カラーポジ、... 選択肢があるのは幸せなことですね。
※ 2021年3月22日にカラーネガフィルムの自家現像とスキャニングについて記事を書きました。
【フィルム消費速度】
フレームレート(コマ数/秒)が高ければ滑らかな動画になる。
そのかわりに消費フィルムは長くなる。逆に低速度で撮影すればパラパラ漫画風にカクカク動くものの、フィルム消費量は少なくてすむ。
100feet(30.5m)だと業界的には 2分45秒撮れることになっていますが、私には一気にそれを消費する度胸はありません。
(#作品作りよりも修理・調整のテスト撮影が多いため)
私の場合は1回で自家現像できる最大長は約2m。これが基本。逆算すれば2mを有効利用するフレームレートがわかります。
そこで、実際のフィルムのコマ数と長さを測ってみますた。つまり 1秒間に何cm消費するか!
8コマ/秒 ⇒ 6.1cm 2mだと約32秒撮れる ※シネカメラではメーカーに依らず低速撮影では不安定な傾向がある
12コマ/秒 ⇒ 9.2cm 2mだと約21秒撮れる
16コマ/秒 ⇒ 12.2cm 2mだと約16秒撮れる ★1秒で12cmと覚えよう
18コマ/秒 ⇒ 13.2cm 2mだと約15秒撮れる
24コマ/秒 ⇒ 18.2cm 2mだと約11秒撮れる 100feet(30.5m)全て使えば 167秒(約2分45秒)撮れる
32コマ/秒 ⇒ 24.3cm 2mだと約8秒撮れる
なんてケチ臭い計算でしょう!
う〜〜〜ん、でもねぇ。スチルカメラの世界からシネマの世界にやってきたワタクシとしてはフィルムを大事に使いたいワケですよ。
なにしろ MAMIYA 16 シリーズや Minolta 16 とか Rollei 16、MEC 16SB、あるいはMinicord など、使うカメラは1回に40cm程度が基本。
シネマのように1秒間で18枚とか24枚撮影するのは夢の世界でした。
それに、1カット15秒もあればたいていのものが撮れる。30秒なんてすごく長い。
テレビのCMなんて15秒でしょ? しかもその15秒間は4カットぐらいで構成されてたりして ... 。
フツーの映画とかテレビドラマでも1つのカメラで15秒以上撮り続けることなんて稀ですよ。
たいていの映像作品は数秒から十数秒以内のカットをつないで完成していると理解しています。
(#ダラダラ撮りっぱなしのYouTubeの動画など見ているといかにもシロウトに思える:それがいい場合もあるんだけど)
【交換式外付けファインダーが基本】
ボレックスH16ではファインダーはモデルによって装着位置や画角の組合せ(セット)が異なります。
初期のH16ではボディ上部に装着する15mm、25mm、75mmの3種対応でしたが時代ごとに増え、
このH16 M4 の時代には左側面に装着し 16mm、25mm、35mm、50mm、(63mm)、75mm、100mm、150mm の8種類。
視野窓面積調整式でパララックス修正機能付きです。
じつはダイヤル位置を微妙に変えれば各焦点距離の中間や中途半端な焦点でも使えます。さすがアナログです。
オプションで10mmレンズ用追加ファインダーキットもあります。
次の写真の左側は初期から1940年代にかけてのファインダーで右側は1950年代以降のファインダーです。
レンズを揃えるならば、個人的にはまず 16mm(ライカ判の48mm相当)が最優先。
もしくは25mm(75mm相当) があればひとまず充分。
次にオプションで10mm(30mm相当)とか、それ以下の6mmのような広角、あるいはさらに追加で75mmや150mmなど、あればあったで便利で面白いです。
※注意:同じボレックスの8mm機であるH8モデルのレンズはフランジバックの違いで16Hでは使えません。外観はよく似ていますが互換はありません。
■ TSULTRA C LING
【フィルム節約と自家現像を実現するスグレモノ】
さて本題です。私が試行錯誤で考案した治具です。
短いシネマフィルムでも撮影できるようにリール内のフィルムを抱え込み、撮影時は空回りしてフィルムの送出を妨げないスグレモノ。
極力フィルムを露光させないように囲んでしまえ、という激しくケチな発想。
スプレー缶のキャップを15mm幅で輪切りにして1カ所をカットするだけ。
そこいらの円筒形のポリ容器みたいな物なら何でも使えると思います。直径は約6cm程度です。
実際に試写したところ、フィルム装填時の最初の約30cmはやむおえないですが以降のフィルムはほぼ未露光。1.5m無駄にするよりもはるかに有効です。
※注意:御自分で作るときは刃物でケガしないように用心してください。
※注意:込めたフィルムの送出用であって、巻き取る側のリールには使えません(巻き込み故障する恐れがあるため)。くれぐれも自己責任で。
※参考: ダークバッグ内で100feetの長尺フィルムから1mとか1m切り出して空リールにフィルムを込めるときは、フィルム先端は折らずにスプール軸のスリットに軽く挟む程度がいいカモ(#Cリング内でほどけるぐらいが良い)。
● 今日のPAY
ウチはセラックやオイルニスといった天然素材の塗料が主の弦楽器工房。
とはいえ、たまにモダンな楽器の修理があって、先日使ったスプレー缶です。
スプレー塗料の廃材利用なので ほぼ無料 ¥0
■ 撮影コマ速度とシャッター速度
シネマの世界に入って最初に抱いた疑問。「シャッター速度はどうなるの?」
写真(静止画/スチル)を撮るときにはフィルムのISO感度を決めて、絞りを決めて、シャッター速度を決めて、シャッターを押す。
絞りとシャッター速度は撮影のたびに任意の設定が出来るのが一般的です。
しかし映画(動画/シネマ)の世界では基本的には標準速度で撮影するのでシャッター速度は固定。
シネマでは8mmでも16mmでもそうですが、撮影速度(fps)を16コマ/秒に設定してもシャッター速度は 1/16秒にはならず約2倍の 1/32秒とか 1/40秒とか になります。
つまり、シネマカメラで露出を決定するときのシャッター速度はシャッターやファインダーの構造により機種別・モデル別に異なると思った方がいいです。
ちなみに、たいていのシネカメラがそうですが、撮影速度(fps)が高速なほど安定しており、低速の8コマ/秒などは動作速度が不安定な傾向があります。
ボレックスでは H16シリーズのうち、比較的古いモデルでは毎秒コマ速度を16コマ/秒ならシャッター速度はおおざっぱに約2倍の1/30秒でヨシとします(ネガフィルムで撮れば補正幅が広いので1/40秒でもOK)。
と覚えます。忘れたり迷ったら2倍でよしとしましょう。
シャッター角度が固定の H16 では190度 のモデルも多くあります(とくに初期型)。
ボレックス H16 M4 ではシャッター角度は144度なのでこの「映画カメラのシャッター速度」で確認するのも良いでしょう。
で、御丁寧なことに H16 M4 の場合はボディ前面のパネルに露出表が印刷されています。
プチブルのアマチュア向けですね。
このモデルの内部の機械はプロ用と同じですが家庭撮影に不要な機能を省いてわかりやすく使えるように考慮されています。これなら忘れてもダイジョウブ。
このパネルをシロウト向けと見て好まない人達もいますが、私は好きですね。
グラフィックのスタイルが時代を反映していますし、フォントも面白い。
露出は時にプロでも間違えるので基本を押さえて失敗を避けるという意味でもわかりやすい。
とかくスペックに走りがちなのがシロウトコレクター。当時の時代と文化に味を見出すのが趣味人というものでしょう。
以下はBOLEX H16 M4(1972年製)に印刷してあるパネルをもとに私がまとめた【撮影コマ速度ーシャッター速度】表です。
【REFLEXモデルの露出は要注意】
ちょっと面倒なのがH16のレフレックスモデル RX/REX などで、 ハーフミラーで入射光の 1/3 をファインダーに2/3をフィルムに分光しているので暗く仕上がります。
従って撮影速度(fps)を16コマ/秒に設定してもシャッター速度は 1/60秒程度です。ポジフィルム(リバーサルフィルム)で撮るときはとくに注意が必要ですので、使うシネカメラの機種について前もって調べておいたほうがいいでしょう。
また、BOLEX H16にはシャッター角度可変モデルや差込式フィルタを挿せるモデルもあり、それらも露出に加味する必要があります。
そしてもうひとつ注意点としてレフレックスモデルは撮影中はファインダーから目を離さないことです。
接眼レンズからの光がフィルムに逆入射してフィルムにカブリを発生させてしまいます(#だからアイカップも必須)。
レフレックスのファインダー側面には逆入射光防止用の蓋レバーが付いているのはそのためです。
プロの道具を使うにはプロの作法が求められます。弦楽器製作の世界でも同じですな。
■ BOLEX H16 の使い方
【16mmフィルムを入れる:片目と両目】
ボレックス H16 の使い方としてまず確認すべきコトは、使えるフィルムが片目か両目かということでしょう。
それはカメラ内部のシャッター両脇にあるスプロケットを見ればわかります。
ダブルパーフォレーション(両目/両穴)仕様はスプロケットの上下に歯が付いていますが、シングルパーフォレーション(片目/片穴)仕様はスプロケットの底側にだけ歯があります。
両目スプロケットの場合は両目フィルムしか使えませんが、片目スプロケットは片目と両目の両方のフィルムが使えます。
16mmフィルムの入手のしやすさを考えると片目のほうが選択肢も多いです。
2020年3月現在では両目の16mmフィルムもかろうじて生産・販売されています。
古い時代のH16は基本的に両目(ダブルパーフォレーション)仕様ですが、片目(シングルパーフォレーション)仕様に改造された個体も多く見られます。 入手すべく探すときには要注意です。
片目のほうがよかろうと、私も手元のジャンクBOLEXから片目のスプロケット2個を取り外して両目の別個体に移植したことがあります。
スプロケット側面のネジを緩めて上に引き抜くだけなのですが、寸法がギリギリに作ってあるのでなかなか抜けないことがあります。
また、装着するときにスプロケット周辺のいくつかのガイドプレートを変形させないと入らないこともあります(分解すれば曲げずにすみます)。
差し替えたあとに試験用フィルムを入れてしっかり調整せねばなりません。
※ 両目スプロケットは光沢クロムメッキで平坦なものが多いですが、片目のスプロケットは梨地で艶消しです(上面は平坦か膨らみの穴無し)。
さて、いよいよフィルムを入れて撮りましょう。
まず本体上部の軸に生フィルムを巻いたリールを挿します(あらかじめダークバッグ内で必要な長さを巻いておく)。
フィルムを本体へセットするときは余計な露光を避けるために、なるべく暗いところで作業しましょう。
もちろん TSULTRA C LING があればフィルムを有効利用できます(込める側のリールにフィルムを挿して留めるときはテープ類は使いません)。
次にフィルム先端を上のスプロケットに挿して両側のドロップガイドプレートを閉じておき、シャッターボタンを数秒間押します。
するとオートローディング機構が働いて勝手にフィルムはガイドとゲートを経由して下のスプロケットから出てきます。
うまくいかなかったらいったんフィルムを剥がして再トライ。
うまくいったら巻取り側のリールにフィルム先端を挿して本体軸へセット(テープ使用可)。
最後に必ず両方のドロップガイドプレートを開いた状態にします。これで準備完了。
慣れるまで練習しましょう。鉄カメラの世界ではテスト用フィルムは必須です。
※ 長尺から数mを切り出して空リールに装填する作業はダークバッグ内で行います。
※ フィルムの乳剤面がレンズ前方へ向くようにします。片目フィルムは目が底側になるようセットします。
フィルムの装填を終えたら確認しましょう。
乳剤面がちゃんと前方を向いていますか?
片目フィルムの場合は目が底側になっていますか?
スプロケット両脇のドロップガイドプレートは開いた状態ですか?(閉じてはいけない)
カメラ本体のフタはしっかり閉まっていますか?(3本の爪の具合を確認すべし)
スプロケット両脇でフィルムがたるんでいる部分を「フィルムループ」といいます。
フィルムループは機械設計でいうところの「遊び」なのですな。
キチキチに張ったフィルムはかえって不安定に送られるので、たるみを持たせることでわずかな速度差を吸収するわけです。
※2020年3月4日 フィルムが詰まったり噛んでしまったときの対処法をこのページの最後に追記しました。
【 コマ撮りするには 】
スチルカメラのように1コマづつ撮影するコマ撮り機能があります。
クレイのアニメーションや定点観測の記録動画作成などにも活用できます。以下にメモを書いておきます。
・ I - T セレクタは I とする
・ 速度を8や12の低速にしない
・ スライドシャッターボタンは P で1コマ撮影
■ 16mmフィルムとレンズの関係
16mmシネカメラのレンズについて書いておきます。まず、明確に述べたいことは、
1980年以前の16mmシネマカメラに付いているのは一部の例外を除いて Cマウントのレンズです。
BOLEXの場合はケルン(Kern)のスイター(SWITAR)が標準的に使われていました。
当時は優れた描写と評価され国際的に高い人気を誇る名レンズでした。当時は。当時は。当時は。当時は。
他にもCマウントの名品と呼ばれる16mmシネマレンズはたくさんありました。
フランスのアンジェニュー、ドイツのシュナイダー、100mを10秒で駆け抜けるカール・ルツァイス、
英国のテイラーホブソン、日本ではニコンのシネニッコールやキャノンやフジノン .......
しかし、実際に当時のレンズをあれこれ入手して使ってみたところ、マトモなものはありません。
というより、ヘリコイドの固着やグリス切れ、カビやカビ痕、コーティング不良やクモリやにじみがどうしてもあります。
それらが目立たないそこそこの個体は数万円以上します。その数万円の幅と満足度が問題。
当時のレンズで撮影したブログなどをあれこれ見ても満足度が高いようにはみえず ... 。
昔と違って今ではマウントアダプターでミラーレス一眼のデジカメに付けてじっくり検証できますからね。
ほとんどの古いレンズはヒドイもんです(※ フランジバックの正しいアダプタが前提)。
個人的には長いこと16mmスチルカメラを専門的に撮ってきたので、シネマで撮影しても現像したフィルムの1コマづつを観察してしまいます。
率直にいえばシネマレンズはスチルの16mmレンズの性能には及ばないというのが率直な感想です。
シネマレンズはあくまで「動画」として完成させたときの見え方が良ければ品質的には充分なのです。
現在のミラーレス一眼デジカメにアダプタで装着して撮ってみても、価格相応とか、お買い得感のあるレンズは一つもありません。
昔のレンズが1000円とかで売っている時代はよかったのですが、ミラーレスとアダプタの登場でシネマレンズは無駄に高騰しているのが現状です。
21世紀に入ってからのレンズ設計や生産管理は昔とは精度が2ケタ違い。
古いレンズの拭き傷やグルグル渦巻きボケやピントの合わないレンズを賞賛し愛好する人達もいますが、
トイカメラならともかく、レンズだけは慎重に選んだほうが良いと思います。何をどう撮るかにもよるとは思いますが ....
今となっては白亜紀のSWITARレンズ2種。時代なりのデザインは気に入っています。デザインは。デザインは。デザインは。
キチンと整備されて状態の良い優れたレンズも無いわけではないのですが ...(#そういった個体は手放すべきではありません)
古いシネマレンズは捨てましょう。現時点でいえば、レンズ1本に5万円や10万円出しても満足感が得られるかどうか ...
モチロン、カネに糸目を付けないという方は程度の良い当時の名作レンズを存分にお楽しみください。
産業用の新品や新古品が5000円で売ってます。 安価なものは3000円ぐらいから。
【どんな画角のレンズを使うか?】
16mmフィルム撮影フォーマットは古い順にStandard:10.2×7.4mm Super 16mm:12.5×7.4mm Ultra 16mm:11.6×7.4mm
今まで書いてきた上記のボレックスの時代でいえば 10.2×7.4mm です。これを基準としてCマウントのレンズを選びます。
そういえば、前回紹介した16mmシネマカメラ Simplex Pockette はレンズ固定で交換式ではありませんが 25mm F3.5 というレンズが付いていました。
交換式でないということは標準レンズと考えてよいでしょう。
実際、当時のシネカメラでは多くのメーカーが 25mm を標準として装備していました。
ところが Simplex Pockette のファインダーを覗くと望遠気味に見えます。
スチルカメラでいえば マミヤ16 や初期のMinolta16 などは25mm F3.5 レンズが標準でしたが、
実際に撮ってみるとやはり望遠気味であったことを思い出します(#但し、16mmスチルのフィルムフォーマット/写る面積は 10x14mm)。
16mmシネマレンズでは画角を決めるとき、35mmフィルム/ライカ判に換算する場合はレンズの焦点距離を約3倍します(#3.5倍論もある)。
そこで、以下の表を作ってみました。
私が個人的に思うには16mmシネレンズで標準と呼べるのは16mmとか20mmぐらいであろうと思うのです。
【16mmシネマにこそ使おう Cマウント産業用レンズ】
2020年現在、監視カメラや製造ラインの形状認識カメラ等に使われている Cマウントレンズは昔の16mmシネマカメラのレンズとして使えます。
但し、産業用レンズはCマウントといっても使用する撮像素子(センサ)向けのサイズが各種あり、全部が16mmシネカメラに向いているわけではありません。
例えばCマウント産業用1/2型センサ向けのレンズで 12mm F1.4 があったとしましょう。
これを16mmシネカメラに付けると日本の国旗のように中央に像があって周囲は真っ暗になります。
また、Cマウント産業用4/3型センサ(マイクロフォーサーズ)向けのレンズで 12mm F1.4 があったとしましょう。
これを16mmシネカメラに付けると広角どころか望遠気味に大きく写ってしまいます。
★フィルムに写る面積 10.2×7.4mm のサイズに近いセンサ向けのレンズを選べば昔ながらの16mmシネマカメラの画角の感覚で使えます。
・市販の産業用Cマウントレンズでは 1インチ型センサ もしくは 2/3型センサ向けの製品をオススメします。
・35mmフィルム/ライカ判に換算する場合はレンズの焦点距離を3倍します。
・後玉が突出したレンズはシャッターに食い込む恐れ有り。
・産業用レンズでは固定焦点レンズも多いのでフォーカス調整できるかどうか要確認。
・距離目盛が刻印されていないものも多い。
・絞りの目盛が刻印されていないものも多い。
・絞りが完全に閉じるものが多い(F16の仕様でもさらに暗転まで絞れる。フェードイン、フェードアウトも可能:閉じっぱなしに要注意)
・対象センサのサイズが何インチなのか明記せずに売っていることも多いので要注意。
・マウントネジ部の突出は6mm以下を。とくにターレット式シネカメラに使うなら要注意。
・レンズ筐体のサイズや形状も様々なので物理的に装着できないものもある(とくにターレット式シネカメラは要注意)。
・ターレット式のシネカメラに超広角レンズを付けるとレバーが写り込むことがある
私の手元にあるレンズの一例を以下に書いておきます。
撮像素子のセンササイズが2/3型や1型向けのものです。
H16のターレットモデルでは広角寄りのこの3本が私のお気に入りです。
どれも5000円前後。試写の結果は昔のレンズよりもはるかにシャープで階調広く低収差で優良です。
昔から言いますね、 「女房とレンズは新しいほうがいい ... 」 おっと、「畳とレンズは新しいほうがいい ... 」
・FA産業用 (TVレンズ)Moritex/モリテックス ML-1614 Cマウント 16mm F1.4 2/3インチセンサ用
・FA産業用 (TVレンズ) Canon/キャノン Cマウント 25mm 1.4 1インチセンサ用
・FA産業用(広角固定焦点) Tamron/タムロン 22HA Cマウント 6.5mm F1.8 2/3インチセンサ用
※ 3本とも MADE IN JAPAN もしくは JAPAN の刻印入り
【やっぱり便利なターレット式H16】
H16 M4 が簡潔でわかりやすいのに対して、3つのレンズをクルクル(ガチガチ)回転させるターレット式のH16、これもまたいいですねぇ。
いかにも映画用カメラ。
私の手元にあるのはシリアル番号と仕様からみて1949年の H16 Standard と思われます。シャッター角度は 190度です。
広角・標準・望遠を付けておけば瞬時のレンズ交換で多彩な表現が可能です。フォーカサー付き。
1980年ごろから業界では徐々にズームレンズ1本ですむようになりましたが、個人的にはそれでもやはりガチガチが好きです。
カッコイイねぇ ....
■ まとめ動画
黄昏の小田急線2 MP4形式 32MB ちょっと端折ってます。じっくり読むにはポーズを使ってください。
■ あとがき
ふぅ ... BOLEX のシネマカメラ H16 について記事を書いてみましたが、全文を書き終えるのに3ヶ月かかりました。
かつての同僚であった映画制作の先生の話を思い出したり、今になって調べてみて ... はっ!そうだったのか、と今更ながら思い出したり新たに気付いてみたり。
また、短いフィルムで撮影する工夫といいますか、独自に実験を試みたことなど書いてみました。16mm映画の入門者、BOLEX入門者の参考になれば嬉しいです。
次回は家庭用16mmシネカメラの金字塔「シネコダック / CINE KODAK」の予定です。お楽しみに ....
● 資料:関連サイト
・BOLEX COLLECTOR:ボレックスの8mmと16mmのシネカメラの超充実サイト。時代別モデルの特長やアクセサリやシリアル番号までじつに深い
・レトロ通販(レトロエンタープライズ):国際的に知られる墨田区の小さな会社。しかし恐るべき執念、8mmフィルムを作ってしまう。もちろん各種現像やテレシネも!
・Wikipedia 小型映画
・Wikipedia 8mm映画
・Wikipedia 16mmフィルム
※ 勘違いなど書いておりましたら mmm★st.rim.or.jp まで遠慮無く御教示いただけると嬉しいです(★を@に置き換えて)。
記事:2020年3月1日
● 追記:フィルムが絡んだり詰まったり噛んだりしたら
フィルムが詰まったり噛んでしまったときの対処法を追記します。
一本足の古い時代とフラットベースになってからの新時代のH16では少し異なりますので2つの場合について書いてみました(図を参照)。
共通することは左右のドロップガイドプレートを開いておき、フィルムを押さえるプレートなどは小さな丸い頭のピンを引き上げて動かせば隙間ができるということです。
スキマを作らないとスプロケットの爪(歯)があるのでフィルムは除去できません。
古いモデルではシャッターを T のコマ撮り状態にして掻き下ろし爪をひっこめないとフィルムが外れません。
※ 再稼働するときは各ピンやドロップガイドプレートが所定の位置になっているかを確認。
※ ボディ側面の I-Tレバー (IとTのセレクター)は通常は I:Instantaneousの位置で撮影します。対して T:Time は長時間露光などで使います。
記事追記:2020年3月4日
● 追記:フィルムが絡んだり詰まったり噛んだりしたら(補足)
フィルムが詰まったり噛んでしまったときの対処法。クランクハンドルを持っていたらラツキイ池田です。
ボディ右側面のセレクターを通常のMから 0 に切換え、シャッターボタンは後方(M)へロックした状態でクランクハンドルを挿して自分の手で回転させれば詰まったフィルムを巻き戻すことができます。
● 追記:古い時代の1本足 H16 で8焦点ファインダーを使うには
1949年頃までの古い時代の一本足H16の多くは3種(3焦点)ファインダーでした。8種(8焦点)ファインダーが登場したのが1950年。
私の手元にある1949年のH16スタンダードは3焦点ファインダーですが、ファインダーの取付金具の形状が異なるために8焦点ファインダーが使えません。
そこでジャンクBOLEXの登場。ほとんど同じ時代なのでフタを交換すれば8焦点ファインダーが使えます。
金具だけ交換してもよさそうですが、ネジ個数もネジ穴位置も違うほか、パララックス補正精度を上げるためにシム枚数を調整したりと案外厄介です。
歴代H16のフタはマウント側の辺の切り欠き形状などが時代によってわずかに違いますが、おおむね同じです。
シリアルナンバーの近いものを選び、フタ内部の穴の配置などを確認したほうがいいかもしれません。
全ての時代のフタを調べたわけではないので合わないものもあるかもしれません。あくまで参考程度に。
※ 譲渡するときは本体とフタのシリアル番号が揃わないと困るので、本来のフタは捨てずにとっておきましょう。
記事追記:2020年3月4日
記事補足:2020年4月14日
※ フラットベッドスキャナとLEDトレースパネルを使ってスキャンする場合はガラス板で押さえないほうが良い場合があります。
スキャナのメーカーやモデルによっては焦点がガラス面ピッタリではなく、ガラス面よりやや浮いた上面であったりするからです。
● 追記:ダブルエイト(DOUBLE-8 / ダブル8)のフィルム復活!
2019年の時点ではダブル8のフィルムを使う8mmシネマの環境は絶望的でした。というか、終わっていたのです。
ダブルエイトのカメラは1台100円ぐらいでヤフオクに大量に出ていました。
シネカメラがいくら元気でも、フィルムが無いので役目は与えられなかったのです。
この状況はざっくり数十年間続きました。
ところが、2018年頃からダブル8のフィルムを製造・販売しようという運動が国際的に盛んになり、
2020年頃になるとモノクロリバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、そしてそれらの感度違いの製品などが販売されるようになりました。
ここしばらくのあいだに状況は急変したようです。こんな時代が来るとは信じられません。
今まで半世紀以上にわたって肩身の狭い思いをしてきたダブルエイトのシネマカメラ。
役目は終わった。昔は良かった。仕方が無いよね。懐かしい。歴史的遺産だよね。博物館で安らかに眠れ ... などと言われてきたのです。
ところが、自体は急変! 今こそ活躍の出番を与えられたのであります。
手元のベル・ハウエル 134(Bell&Howell 134)が半世紀ぶりに目覚めます。試写例はコチラ。
ダブルエイト万歳!
Film Photography Project 8mmフィルム ダブル8(Double-8)
記事追記:2020年6月27日 2021年4月3日全体の修正 2021年7月19日ダブルエイトの試写例追加
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